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10-11-17
PCオーディオについて印刷物もやっと追いつこうとして来てるようですね。書店で立ち読みしてみましたけど、ネットの方が情報が明らかに早いし的確ですねえ。audithallもおかげで助かってます。 以前の記事
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しばらく使い込んでるうちにNF-4Aの鳴り方が段々分かってきたので、ここらでfostex社製のこの面白いアクティブSPについての当座の印象みたいなのを書いてみます。カタログに載ってるスペックなんかはここで改めて出す必要はないのでほとんど書きませんから、興味があればメーカのサイトなりに行ってみてください。
0. モニターSPである 言うまでもないんですけど、NF-4Aはモニター用途にデザインされ製作されたSPです。即ち入力された音声信号を可能な範囲で忠実に音声として出力し、いわゆるオーディオ的な演出はありません。 しかもNF-4AはモニターSPらしく俊敏かつ素直なのでNF-4Aだけでは音が全然決まりません。NF-4A自体の設置状況や送り出し側の機器の状態、そして電源回りとか接続ケーブルの引き回しなどで音の傾向が様々に変わるので、結局NF-4Aの出す音の良し悪しは設定次第になります。 つまりNF-4Aを使ってどんな音を出すかは設定する者の腕に掛かっているってわけで、設定がタコだとタコな音が、半端こけば当然半端な音が出てきて笑えます。モニターSPはオーディオには使えないとか思っている人もいるようですけど、少なくともNF-4Aに関してはそんな言い訳は全く通用しません。 1. DSPを使ったバイアンプ構成になっている バイアンプ構成のアクティブSPなんて今時珍しくも何ともありませんけど、DSPを使って帯域を振り分け96kHzのサンプルレート単位で時間応答を揃えたものとなると、ちょっとお買い得の気がします。audithallが同じ価格帯の製品の中でNF-4Aを選んだ理由のかなりの部分をこれが占めてたんです。 さらに面白い事にこのNF-4Aは、入力のADCからパワーアンプ手前のDACまでのデジタルステージを2基並列に動作させ、得られる2つのアナログ音声を混合してパワーアンプに入れてますね。チャンネルデバイダもDSPで構成しているので1台あたり計4個のDACが搭載されてますけど、そこまで面倒くさい事をする理由は、ADCで宿命的に発生するコードエッジノイズを抑制するためと想像されます。 アナログ入力/アナログ出力の処理系だからこそ実現できる贅沢な回路構成で、NF-4Aは開発側がやたら音質にこだわってるみたいです。しかしこの価格帯の製品でここまでやれるもんですかね、普通。敏感なアクティブSPがこの値段で手に入る事は一消費者として有り難いとしか言えませんけどね。 2. 過渡応答が良い 反応の速い小口径ウーファと小さなエンクロージャと言う贅肉のない構成で、鋭いアタック音がすっと引いていく爽快な音の出方をしますね。厚みを加える味付けをしないのでオーディオ的には欠点と見なされるかもしれませんけれど。全音域でおまけがほとんどつかなくて、1980年代以前の音源など音場の疎らな録音がそのまま疎らに聞こえます。むしろ寂しく聞こえると言った方が良いかもしれません。 その代わりに低音域での音程感は非常に良いです。例えばバスドラムを手持ちのばちで叩いている曲では、奏者は皮を叩く位置の調節などによって音程や響きの彩りを加えながら演奏しますね。半端な作りのオーディオSPでそんな音源を聞くと、バスドラムの音そのものは気持ちよく聞こえても強弱以外の情報はけっこう曖昧になって、漫然と聞いていると気がつかない場合すらあります。しかしNF-4Aを擁する現在のaudithallのシステムだと、それらの情報の全てが強制的に耳に入ってきますから聞き逃しようがないです。 真に優れたSPとは出すべき音をきちんと出せるだけでなく、ないはずの音は極力出さないようにしながらなお音楽的に聞かせる能力を持つものだと思います。そう言えば海外メーカのアクティブSPには、DSPでコンボリューションを入れて箱の鳴きなどをキャンセルする処理を行う製品まであるそうです。ドメインがデジタルに移行するに伴ってなんだか楽しい事が起こってるようです。 3. 音像・音場共に再現性が高い これも余計な音を出さないおかげなのだと思いますけど、音数が増えて音場が複雑になって行っても、低音域から高音域までのどのパートからも焦点が外れません。ベースの音がこんなに追いやすいSPはaudithallにとっては初めてで、嬉しくてしかたないです。 それに音像が全方向に実によく見えるし高さも奥行きも難なく出せます。適切な位置に置いて鳴らすだけでここらがとりあえず出せるのである意味苦労いらずのSPとも言えます。残響音が時間的にも空間的にも正確に聞き取れるためでしょう、近年のスタジオ録音を再生すると部屋が広く涼しくなったような錯覚を覚えます。2チャンネルステレオでのサラウンドサウンドは周辺の音像が曖昧になる欠点があると言われたりしますけど、NF-4Aの音を聞いていると、曖昧になるのは実装の問題であるのが分かります。 特に電源回りの整備に力を入れると音像が更に小さく濃厚になり点音像に近づいていきます。そうして24/96に再サンプリングした音声と聞き比べると、素の16/44.1のデータをDACに掛ける事で発生する雑音や歪みが音像をにじませ、音場をぼやけさせているのが事さらのように分かります。両者の違いが聞き取れないとすればシステムのノイズフロアが相当に高いか歪みがかなり大きいのでしょう。 4. 寝起きが悪く目が覚めるのが遅い 電源投入から本来の音が出始めるまでに時間が掛かります。これはデジタル音声機器の避けがたい宿命と思われます。この事を頭に入れておかないと、試聴などの際に判断を誤るんじゃないかと思うので、audithallの経験を書いてみます。 NF-4Aの電源スイッチを入れてすぐに音を出すとまず全音域で雑音が多く上ずった、デジタル機器の寝起きらしい音が出ます。音を出し続けるとまず出力段が数十分で暖まり、それから2時間以上掛けて再生音が徐々に落ち着いて来て十分な分解能と力感が加わってきてかなり聞けるようになります。 もう十分と思っていたら、それから更に3時間くらい経ってやっとNF-4A本来の音になります。全体的には音の厚みが増したように感じられ、低音は反応が非常に速く量感も最高となり、高音は必要なだけ存分に出るけど無駄な音を一切出さない小気味良いものになります。つまりは電源スイッチを入れてから仕上がりまでに5時間以上掛かる計算になります。そしてこの時間を隔てて聞き直してみると、本当に同じSPなのか疑問を感じるほどに音が変化していて、慣れるまでは戸惑うかもしれません。 (余談などを) ここで電源ケーブルやノイズフィルタなどで電源由来の雑音を管理すると、電源投入時点から音質の改善が得られると共に十分暖まって仕上がった音との差が小さくなります。ちなみに音を出さずに通電しておくだけでは出力段が暖まらないので、いずれにしろ30分くらいの音出しは必要です。 audithallはTAP-PLUSからの給電に現在はSAECのPL-6000を使ってますけど、m902においてこの電源ケーブルとTIGLONのMGL-1000Aとを比較した結果をふまえると、まだ電源側からNF-4Aを詰める余地があると思います。かつてはオヤイデのBlack Mamba-αを使っていましたが、NF-4Aの出しうる音を考えると明らかに役不足でした。ましてデフォルトの電源ケーブルなど論外です。 音場再現性に関しては一切手を入れなくてもかなり優れたものがあるのは既に書いたとおりですけど、下手に手を入れると音質は良くなっても音場が狭くなったりするので要注意です。audithall自身この現象に久しく悩まされていて苦しい日々が延々と続いていました。最終的にはどんなSPでもこれで出なきゃ嘘だろうと思われる設定にまで持って行ったわけですけど、おかげで到達点は相当高いみたいだし、音質と音場のバランスがうまく取れているようです。 今回はNF-4Aについて電源系と足回りに本体の実売価格を大幅に上回るコストを投下していて、それ自体は完成品のはずなのになんかキットみたいな感じがしてます。SPじゃなくて周辺が音を決めてると言えるかもしれません。完成度の高い高額製品を買ってポン置きで鳴らすよりも、手の入れ方次第で好みの方向に伸ばせる品の方がaudithallにとっては面白いです。 果たして色気のない音しか出せないaudithallのNF-4Aではありますが、その音に耳が慣れたせいでシステムの音をより分析的に聞けるようになった気がします。聞こえている音の柔らかさとか爽やかさとか、あるいは力強さとか言った印象が、単に印象としてだけでなくどの音域にどの種類の変化が付け加わってあるいは不足して、結果的にそのような感覚をもたらしているのか想像が働くようになるんです。 そしてそのような想像が働くようになれば、印象の操作と言った曖昧なものでなく、音質を狙った方向に向かわせるための具体的な策を練る事ができるようになります。これってオーディオに取り組む上で非常に大事な事だと思います。そして小型で重くもないNF-4Aは、そのような経験値を身につけるためのとても優秀な道具となってくれます。 そんなわけでPCオーディオに真面目に取り組んでみたいと考えている人は、一度NF-4Aの音を経験しておいて決して損はないですよ。
by audithall
| 2010-06-20 18:20
| NF-4A
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